QA(Quality Assurance)はソフトウェア開発において品質を確保する不可欠なプロセスです。例えば、2024年2月29日に起きたスギ薬局のうるう年に関するシステム障害ですが、QA段階でうるう年のパターンを考慮し、テストしていたら防ぐことができたかもしれません。

参照:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2403/01/news120.html

この手法は、ソフトウェアが要件を満たし、安定性や信頼性を備え、ユーザーエクスペリエンスを向上させることを目指しています。

QAは、開発の初期段階から終盤にわたり、テストや検証を通じて問題を特定し、システムの品質向上を目指す業務工程です。品質保証を行うことで、プロダクトやサービスのユーザビリティが向上し、評価が高まるだけでなく、プロダクトに不具合が見つかり、企業そのものの信頼が落ちるといった可能性を排除することができるでしょう。

本記事では、QAの重要性や基本的な考え方に焦点を当て、効果的な品質管理がビジネスの成功にどれほど寄与するかについて詳しく掘り下げます。

QA(Quality Assurance:品質保証)とは

Quality Assurance(品質保証、QA)は、ソフトウェア開発において、プロセスの実装と改善に焦点を当てた、プロセス指向の予防的アプローチです。この考え方は、「よいプロセスが正しく行われれば、よいプロダクトを作ることができる」という信念に基づいています。

テスト技術者資格制度 Foundation Level シラバス(Version 2023V4.0.J01)」によれば、QAは開発プロセスとテストプロセスの両方に適用され、プロジェクトに参加する全ての関係者がその責任を持つべきだとされています。

QAは、バグの修正だけでなく、プロダクトがユーザーの期待に応え、正常に動作し、ビジネス価値を提供できるかどうかを確認するプロセスであり、この目標を達成するためにはプロセス全体にわたる総合的な取り組みが求められるでしょう

先述のシラバスにおいても、開発者やプロジェクトマネージャーなど、プロジェクトに関与する全ての人がQAに貢献し、プロセスの質を向上させる役割を果たすべきだと述べられています。

この統合的なアプローチにより、QAはプロジェクト全体において品質の向上と問題の予防に貢献し、ソフトウェア開発プロセスをより効果的かつ効率的に進めることが期待されているのです

ソフトウェアにおける品質の定義

品質はソフトウェアにおいて、一般的には製品が要件を適切に満たし、ユーザーの期待に応える程度を指します。

ISO/IEC 25010は製品品質モデルを提供し、8つの特性に焦点を当てており、これらの特性は、機能性、信頼性、効率性、保守性、移植性、予測可能性、セキュリティ、互換性です。

各特性には複数の副特性があり、これらは品質特性図に示されます。たとえば、機能性は適合性、適切性、相互運用性などの副特性から成り立つものですこのような詳細な特性と副特性の考慮は、ソフトウェア製品の全体的な品質を網羅的に評価し、開発プロセスを向上させるための基盤となるでしょう

QC(Quality Control:品質管理)とは

Quality Control(品質管理、QC)は製品やプロセスの品質を確保・向上させる手法であり、欠陥や不具合を検出して修正することに焦点を当てます。

QCは製品が所定の品質基準を満たし、ユーザーの期待を満たすことを保証するために実施されまするものです。具体的には、統計的手法や検査プロセスを用いて製品を評価し、品質に関するデータを収集・分析します。

QCの主な目的は、製品が安定して高品質であることを確認することであり、このプロセスは製品が市場に出る前に行われることが一般的です。

QCは製造業だけでなく、サービス業やソフトウェア開発など、さまざまな分野で適用されます。徹底的な検査と改善サイクルを通じて、QCは製品やサービスの品質を向上させ、最終的な顧客満足度を確保するもので、とても重要なものです。

これにより、品質に対する信頼性が向上し、企業は競争力を維持・強化できるのです。

QA/QC/テストの違い

QA(Quality Assurance:品質保証)、QC(Quality Control:品質管理)、およびテストは、ソフトウェア開発における品質確保に関連する異なる側面を指します。

QAは予防的なアプローチで、プロセスの実装と改善に焦点を当てているものです。良いプロセスが正しく行われれば、品質の高いプロダクトが生まれるという理念に基づいています。

一方で、QCは検査と修正に焦点を当て、不具合や欠陥を検出して品質を向上させるものです。これは製品が一定の基準を満たし、ユーザーの期待に応えることを確認します。

テストはQA/QCの一環であり、プロダクトの動作や機能を確認するプロセスです。これは検証や検査を含み、品質を保証する手段として利用されます。

QAは開発プロセス全体に適用され、テスターだけでなく、プロジェクトに参加する全てのメンバーが責任を持つものですそれに対して、QCは製品の検査を通じて品質を確保し、テストは具体的な機能や動作の確認に焦点を当てます。

これらのアプローチを組み合わせることで、継続的かつ包括的な品質管理が実現され、高品質なソフトウェアの提供が可能となるでしょう

QAを行う主な目的

品質保証(QA)はソフトウェア開発やプロダクト管理において不可欠なプロセスであり、主に「プロダクトの提供価値の保証」「ユーザー満足度の向上」を目的としています。

上記の2点を実現するために日々、バグや不具合の検出を行っているのです。以下のセクションでは、それぞれ焦点に当てて詳しく掘り下げていきます。

1.バグ・不具合の検出

品質保証を実現するために必要なことは、バグや不具合の検出です。

ソフトウェアやプロダクトの多くには複雑な機能が組み込まれており、これらが期待通りに動作しないと、ユーザーエクスペリエンスが損なわれる可能性があります。

QAは、革新的なテスト手法や効果的なツールを駆使して、バグを早期に発見し、修正を促すことでプロダクトの品質向上に貢献するでしょう

早期のバグ検出には、綿密なテスト計画の策定や継続的な統合テストの導入が重要です。また、自動化テストの活用によってリリースサイクルを迅速かつ信頼性高くすることも必要になります

事前にバグや不具合を検出し取り除くことで、プロダクトが期待した動作を提供し、ユーザーが不満を抱えることなくサービスを利用できるため、満足度向上に繋がるでしょう。

2.プロダクトの提供価値の保証

次に焦点を当てるのは、QAによってプロダクトが提供する価値を保証する役割についてです。ユーザーは製品を利用する際に特定の期待を抱いており、それに応えることがプロダクトの成功に繋がるでしょう

QAは機能や性能に関する厳格なテストを通じて、プロダクトが期待通りに動作し、ビジネス目標や利用者の要件を満たしていることを確認します。

QAがプロダクトの提供価値を保証するためには、要件定義からテスト設計までのプロセス全体において綿密なコミュニケーションが不可欠です。

また、リリース前のリグレッションテストやユーザビリティテストを通じて、プロダクトが期待される価値を提供できることを確認します。これにより、QAは開発プロセス全体においてビジョンとユーザーの期待を一致させ、プロダクトが成功裏に展開されることを保証するのです

3.ユーザー満足度の向上

最後に、QAが果たすべき重要な役割として、ユーザー満足度の向上が挙げられます。

品質の高いプロダクトはユーザーに信頼感を与え、使いやすさや安定性が向上すればユーザーエクスペリエンスも向上するでしょう

ユーザー満足度向上には、QAがユーザビリティテストやアクセシビリティテストを通じてユーザーの期待を理解し、製品にフィードバックを反映させることが不可欠です。

また、継続的な監視やデータ分析を通じてユーザーの挙動や嗜好を把握し、プロダクトに必要な改善を実施します。

このようなQAのアプローチによって、ユーザーは高い満足度を得ることができ、プロダクトは市場で成功を収めることが期待されます。

QAは誰が行うのか

品質保証(QA)は開発プロセスにおいて特定の職種だけが担当するものではありません。QAの実施には異なる職種のエンジニアが連携し、全体の品質向上に寄与します。

以下では、開発フローにおける各エンジニアの役割と、QAを担当するテスト担当者が持つべき視点について説明します。

QAエンジニア

QAエンジニアは、プロダクトやソフトウェアが期待通りに機能し、品質基準を満たしているかを確認します。

その他に、さまざまなテストを計画・実施し、バグを見つけ、開発者にフィードバックを提供します。

また、システム全体の統合テストやパフォーマンステストなども担当し、プロダクトの品質向上に貢献するのも役割の一つです

開発エンジニア

開発エンジニアは、ソフトウェアやプロダクトのコードを設計・実装するのがメインの業務です

ただし、単なるコーディングに留まらず、品質にも高い意識を持つことが求められます。コードの品質維持は開発エンジニアの責務の一環であり、コードレビューや単体テストを通じてバグを早期に発見し、修正することが期待されているでしょう

品質へのコミットメントを持つことで、全体のQAプロセスにおいて開発者は重要な役割を果たすのです

また、開発エンジニアがQAに対して協力的であることも重要になります。テスト駆動開発(TDD)や品質向上のプラクティスを積極的に導入し、QAエンジニアとの連携を通じて品質の確保に寄与します。

開発者とQAエンジニアが同じ品質目標を共有し、コラボレーションを深めることで、プロダクトの全体的な品質向上が実現されます。最後に、品質保証(QA)についてもっと知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。QAの基本的な概念やプロセスについて更に深く理解することができます。

QAをさらに効率化する自動テストとは

近年、QAプロセスにおいてますます重要視されている自動テスト。

AIを活用したテストツールの進化が顕著で、Autifyなどは従来よりも効率的かつ網羅的な品質管理を可能にしています。

機械学習や自然言語処理を駆使し、テストケースの作成補助やテストのメンテナンス、結果の分析までを自動化。開発スピード向上と品質担保が同時に実現でき、生産性向上に貢献します。

興味がある方は、自動テストとAutifyの導入を検討してみてください。品質向上と開発効率の向上を実現できるお手伝いをします。

自動テストが求められる背景

自動テストの需要が高まる背景には、以下の理由が挙げられます。

  • 開発手法の変化

近年、アジャイル開発やDevOpsなどの新しい開発手法が広がりつつあります。背景には、市場が変化するスピードが速くなり、ビジネスに必要な機能を需要があるタイミングに合わせて提供できることを目指す動きが増えてきていることが挙げられるでしょう。

これらの手法では、短いイテレーションで迅速な開発とデプロイが求められるため、手動でのテスト作業だけでは追いつかない状況が生まれています。

https://codezine.jp/article/detail/13872

  • システムの複雑化・高機能化・大規模化

ソフトウェアやシステムの複雑さ、高機能さ、規模の拡大が進む中で、従来の手動テストでは効率的に品質を確保することが難しくなりました。自動テストはこれらの課題に対処し、迅速なテスト実施が可能です。

  • 限られた開発リソース

開発においては限られたリソースで迅速な開発を実現する必要があります。自動テストはリソースを節約し、開発者がより価値の高い作業に注力できるように支援するでしょう

  • AIによる技術の進歩

AI技術の進歩により、自動テストもより高度な形に発展しています。AIを活用することで、テストケースの自動生成や異常検知などが実現可能となり、より効果的な品質管理が期待されています。

これらの要因から、自動テストは現代のソフトウェア開発環境において欠かせない存在となっているのです

自動化に向いているテスト/向いていないテスト

自動化に向いているテストには、同じテストケースを繰り返し実行するリグレッションテストや統合テスト、大規模で一貫性が求められるテスト、そして多様な条件での実行が必要なパフォーマンステストがあります。

これらのテストでは、自動化により迅速で効率的な実行が可能となり、変更があった場合にも素早い検知と対応が期待できるでしょう

一方で、手動で柔軟なアプローチが求められる場面もあります。探索的テストはテスターが柔軟にアプリケーションを探索し、新しいバグを見つけるために役立ちます。

ユーザビリティテストではユーザーの感覚や視点が重要であり、これを反映するために手動のテストが適しているでしょう

また、複雑な条件下のテストやビジネスルールを含むテストケースも、柔軟性と洞察力を持つテスターによる手動テストがより良い結果を生み出します。

一方で、複雑な条件をテストケースにまとめるテスト設計の技術と、自動テストの技術を組み合わせることで、高度なビジネスロジックを自動でテストできる可能性もあるのです。

まとめ

QAはソフトウェア開発において全体的な品質向上と問題予防に不可欠であり、開発者やプロジェクトマネージャーとの連携が重要です。

品質には機能性や信頼性などが含まれ、QAはテストや検証を通じて製品の期待通りの動作を確認します。QCとの共存により、安定性も確保されます。

この記事ではQAが果たす3つの主要な役割やQAを実施する人、自動化について詳しく説明しました。QAについてもっと情報を集めたい、知りたい方は以下の記事も合わせて読むことをおすすめしています。

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